お口の中の微生物は700種以上と言われ、歯垢(プラーク)1mg中のに潜む微生物はなんと1億匹以上になります。
歯周病の原因となる微生物はその中の数十種類、細菌・真菌(カビ)・寄生虫(原虫)などで、いわゆる歯周病菌と呼ばれています。
歯周病は歯を失う原因のNo1
歯周病は虫歯と同じく微生物(歯周病菌)の感染症です。
歯ぐき ▶ 歯根膜 ▶ 歯槽骨と破壊され、最終的には歯を失うことになる本当はとても怖い病気です。
2005年に8020推進財団が行った“永久歯の抜歯原因調査(図)”でも歯科医院で抜歯した方の約42%が歯周病が原因となっています。
また、近年の厚生労働省公表の歯科疾患実態調査では成人の75~85%の方が歯周疾患を有していると報告されています。
歯周病は世界的にも罹患者が多く、史上最も感染者数の多い感染症としてギネス認定されています。
歯周病菌とバイオフィルム
バイオフィルム(歯垢・歯石)は微生物の集合体(コロニー)で、虫歯菌や歯周病菌などの温床です。
例えばキッチンの排水口のヌルヌルもバイオフィルムです。
お口の中では歯の周囲に付着した白っぽいネバネバした塊がバイオフィルムで、学術的な定義こそ若干異なりますがプラーク(歯垢)とほぼ同意です。
バイオフィルムは無数の微生物や微生物の排泄物、死骸などが強固に繋がりあって形成されます。表面の粘膜は免疫細胞や抗菌物質を跳ね返すバリアの役目を果たし、歯周病菌や虫歯菌が生息しやすい要塞となります。
歯面に強固に付着しているので、歯磨きだけでは落とせない厄介な存在で、歯科医院で定期的に除去する必要があります。
歯周病は生活習慣病
お口の中が不衛生な時に歯周病菌は活発に活動・増殖します。
しかしそれだけではありません。
生活(食事・飲酒・喫煙など)の乱れ、不摂生な生活によって免疫機能が低下すると歯周病菌の活動も増長します。
歯周病の発症や進行には歯周病菌だけでなく生活習慣も大きく関係してきます。
このようなことから、歯周病は歯周病は生活習慣病に分類される疾患と考えることができます。
歯周病と全身疾患の関係
歯周病は様々な全身疾患に影響することがあります。
全身疾患を効果的に予防するためにはセルフケアとプロケアを有効活用し、口腔衛生に務めることが大切です。
歯周病が悪影響を及ぼす危険性のある疾患
糖尿病 |
糖尿病は血糖値が異常に上昇する病気で様々な合併症に発展する危険性があります。
歯周病と糖尿病は互いの治療効果を妨げ合う関係にあるため、治療において医科歯科連携が広まりつつあります。 |
誤嚥性肺炎 |
微生物が唾液や飲食物とともに肺に入る(誤嚥)ことで発症します。高齢者に多い病気で充分な注意が必要です。 |
感染性心内膜炎 (細菌性心内膜炎) |
微生物が歯ぐきの毛細血管から侵入し、心臓弁や心臓内膜、心筋に感染すると発症します。 |
虚血性心疾患 心筋梗塞 狭心症など |
微生物の血液中への進入によって心臓の冠状動脈が損傷し、血栓が形成されることがあります。
この血栓によって血流が滞ると心筋梗塞や狭心症の危険性が出てきます。 |
内臓疾患 |
微生物が歯ぐきの毛細血管から侵入すると腎臓や肝臓に疾患が起こることがあります。
糖尿病との合併症も懸念されます。 |
早産や低体重児出産 |
“微生物の侵入を防ぐために生体に起こる免疫反応”と“妊産婦の出産直前を示す生体サイン”は似ています。
このサインを生体が誤判断すると早産を誘発することがあります。妊産婦の口腔ケアや歯周病予防は極低出生体重児の出生率を下げるとの報告もあります。 |